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CAMBRA:う蝕リスクを簡易的に評価する

こんばんは。
久しぶりに更新致します。

本日は、 患者さんのう蝕リスク ( Caries Risk ) を簡易的に評価する CAMBRA ( = Caries Management by Risk Assessment ) についての記事を紹介したいと思います。

CAMBRAは全米でも65校の歯科大学中40校が導入して使用しています。
CAMBRAは今世界的にホットなトピックのひとつと言えると思います。

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CAMBRAとは
二つのフェイズより成り立っています。

フェイズ1は患者さんの「疾病の指標」、「危険因子」、「防御因子」を特定するフェイズです。
フェイズ2はこれらをもとに患者さんの実際のう蝕リスクを評価するフェイズです。

CAMBRAでは、次に示す4つの疾病の指標に一つでも該当する患者さんは、即座に「う蝕リスクが高い」と評価されます。

4つの疾病の指標 
1) レントゲン上で象牙質まで達するう窩
2) レントゲン上で確認できるエナメル質に限局するう窩
3) う窩はないが、白斑が肉眼で確認できる
4) 過去3年間の修復処置の既往

ここで注目してほしいのは、「口腔清掃状態」や、「歯磨きの方法・頻度」がこの段階では問題にされていないことです。

歯磨きは歯周病予防には有効です。しかし、歯磨きそのものがう蝕を予防するというエビデンスはありません。

例えば、若年者が口腔衛生状態不良・多量のプラークが歯面に付着した状態で来院したとしましょう。
これだけでこの患者さんを「う蝕リスクが高い」と評価することはできません。多量にプラークが付着しながらも、全くう蝕のない患者さんというのを実際の臨床現場でよく目にするからです。

しかし、実際にう蝕があるかどうかは、今後その口腔内に新たにう蝕が発生するかどうかの指標として信頼性が高いとされます。このためCAMBRAでは「う蝕の有無」「直近のう蝕の治療歴」を最重視し、これらに該当する患者は即座に「う蝕リスクが高い」と評価します。

9つの「危険因子」と11の「防御因子」
仮に患者さんが4つの疾病の指標に 該当しなかった場合、「危険因子」と「防御因子」を勘案しながら患者さんのう蝕リスクを評価します。

これは疾病の指標のように白黒はっきり決まるものではなく、う蝕リスク評価項目とにらめっこしつつ、両者のバランスを勘案しながら個々の患者さんのう蝕リスクを見定めていきます。

危険因子、防御因子には以下のようなものがあります。

<9つの危険因子>
1) ミュータンス菌、乳酸菌の数が中等度〜高度
2) 歯の表面に大量のプラークが蓄積
3) 1日3回以上の間食
4) 深い小窩裂溝
5) 薬物の使用
6) 口腔乾燥
7) 服用薬、放射線治療、全身疾患による唾液減少
8) 根面露出
9) 矯正装置


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実際に用いられているう蝕リスクの評価表


<11の防御因子> 
1)水道水フッ化物添加地域に居住 
2)フッ素含有歯磨剤を1日1回使用
3)フッ素含有歯磨剤を1日に2回以上使用
4)フッ素含有洗口剤を使用
5)5,000ppmのフッ素含有歯磨剤を使っている
6)過去6ヶ月の間に歯科医院にてブラシでフッ素塗布を受けた
7)過去6ヶ月の間に歯科医院にてトレーでフッ素塗布を受けた
8)過去6ヶ月の間にクロルヘキシジン洗口剤を使用
9)過去6ヶ月の間にキシリトールガムを1日4回
10)過去6ヶ月の間にカルシウムやリンが入ったペースト( MIペーストなど)を使用
11)十分な唾液量がある

最終的に、これらの危険因子と防御因子のバランスをみて、患者さんのう蝕リスクを「高度」「中等度」「低度」に分類します。
ちなみに、「う蝕リスクが高い」と診断された患者さんが「口腔乾燥」を持っていた場合、う蝕リスクは「超高度」となります。

防御因子を見て分かるのは、CAMBRAが考えるう蝕予防のポイントは「フッ素の使用」であるということです。

11の防御因子のうち7項目がフッ素についてです。

口腔内に多くのう蝕があるような場合は、食習慣の関与を疑います。


歯科はよく 、「Drill, Fill, Bill = 削って、詰めて、お金を稼ぐ」と揶揄されますが、削って詰めるだけではその患者のう蝕リスクに及ぼす効果はほとんどありません。

本当に治療すべきは、患者の抱える「リスク」そのものです。
このため、アメリカの医局ではう蝕がコントロールされるまで補綴処置に進むことは固く禁じられており、う蝕治療そのものは補綴科ではなく、学生の診療室やAEGD(一般歯科の卒後研修プログラム)、開業医に紹介するケースが一般的です。

補綴専門医の仕事はあくまで「リハビリテーション」。
「疾病の治療」はその範疇ではないからです。
う蝕処置においてはテンポラリークラウン(セメント合着する)やグラスアイオノマーによって仮治療をし、3−6ヶ月おきに新たなう蝕が発生しないかどうかをチェックします。

こうして最低1年—1年半新たなう蝕が発生しなかった患者を「う蝕リスクが十分に下がった」として、最終補綴に進みます。この過程でう蝕リスクのコントロールができなかった場合は、う蝕の再発を防ぐために歯そのものの抜歯、インプラント補綴が検討されます。


長い文章お疲れ様でした。
こういった考え方、う蝕のリスクをとらえる考えもあります。

当院が現在行っているリスク検査も、上記の内容とかけ離れてはいないです。生活習慣、唾液・細菌などの多方面からリスク分析をし、フッ素の重要性を理解して頂き、またう蝕の成り立ち(カリオロジー)を学んでいただく。間違ってはいないです。
しかし、新しい考え、とらえ方もしっかりと吸収し、日々の臨床に生かし、皆様の健康な歯を守るお手伝いをさらにできるように、日々研鑽を積んで参ります。

あかまつ歯科クリニック 赤松佑紀

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